調子に乗って余白を埋めてしまうと物語まで止まってしまう
先日ホームグラウンドである山に行き、平日のマイナールートなので誰一人会うこともなく一人勝手に足攣ったりしてヒイヒイ登り、下山後のバス停まで小一時間続く舗装路歩きを疎んで地図を広げて見つけた寺の奥から続く山道に這い入り、整備はされているものの人気のない細道を辿っていると歩いているのはヒトか獣かただの「かたまり」かというふうになっていく。1時間ほど歩いて薬師寺に降りるとそこはたくさんの人がいて祭りの場に来たような気分になり甘酒を買おうという気にさえなった。後日髪を切りに街へ出てみると山寺とは比べものにならないくらいの人があふれていたが祝祭的なものを感じることはなく、この個人的な心の動きはどうやったら面白く伝えられるだろうかと考える。「紅葉してました?」と訊かれ、「…ええと……」となった。